制服、制帽を身に着け、大きなバスを自在に操る「運転士さん」は、昔から子供たちの憧れでした。運転士の最大の責任は、乗客の皆様を安全に、確実に目的地まで送り届けることです。ひとたび事故ともなれば人命にかかわる重大な結果をもたらすこともあります。運転中は車外はもちろん、バスの車内の安全や乗客の方々の健康状態、乗客同士のトラブルにも十分な気遣いが必要です。また、公共交通機関として社会への貢献度も高く、その重要性、必要性も広く利用者に認められた仕事です。だからこそ、頼もしいその姿は誰の目にもカッコよく見え、やりがいの大きな、魅力ある仕事といえるでしょう。

バスの運転士になるには「大型二種免許（受験資格～普通免許等取得後3年以上）」が必要です。バス会社によっては、「普通免許等取得後3年後以上」の方を採用して、一定の条件のもとに大型二種免許を取得させたり、高校新卒者（普通免許未取得）を採用し、大型二種免許等が取得できる年齢になるまで営業所業務を中心に経験を積ませ、免許取得後にバス運転士として運転業務に従事させる制度を設けているところもあります。

2022年5月からは、改正道路交通法により受験資格を緩和するための特別な教習（受験資格特例教習）を修了することで、受験資格要件を19歳以上、普通免許取等保有1年に引き下げられる特例が設けられています。多くのバス会社では、面接のほかに適性試験、運転技能試験などを実施して、総合的な判断として、採用を決定しています。また、路線バス、観光バスなど、運転するバスの種類によっても採用条件、労働条件が異なる場合があります。まずは、運転士になりたい地域のバス会社を調べて、応募資格や採用条件、労働条件などを調べてみましょう。

バスの仕事のもうひとつの華といえば「バスガイド」です。修学旅行や社員旅行など、観光を目的としたバス旅行には欠かせない存在です。制服に身を包んだバスガイドの楽しく、親しみやすい観光ガイド、ときに披露されるクイズや優しい歌声などによって、どれだけたくさんの方が楽しく、思い出深い旅行を経験されたことでしょう。

バスガイドの仕事は、バスの運転士のパートナーとして、駐車時の安全確認やバスの誘導、旅行ルートでの安全確認など、運転士さんと協力しながらバス旅行を運営する大切な役割も担っています。もちろん、観光地の歴史や地理、史跡や名物、様々なエピソードを紹介する観光ガイドとしてのお仕事がメインであり、このための勉強は欠かせません。そして何より、健康と体力が第一です。一日中立ちっぱなしで仕事する場合もありますが、様々な場所を訪れたり、名産や美味しいものが食べられることなど、楽しいこともたくさんあります。

お客様にとってバス旅行は、その時限りかもしれません。そんなお客様の大切な出会いと思い出となるようなバスガイドという職業は、ほかの仕事では味わえない特別な仕事となるでしょう。

バスガイドになるには、バス会社への入社が必要です。鉄道関連のバス会社、観光バス会社、各都道府県の交通局などに入社し、バスガイドになるための研修を受けます。そこで接客業務や乗務員としての基礎を学び、研修後には先輩のバスガイドと同伴して、実践経験を積み、独り立ちしていきます。研修内容は会社によって様々ですが、発声法や話し方、マイクの使用方法などの基本作法から、カラオケやゲーム、クイズなど旅行演出のノウハウなどを習得していきます。

バス整備士は、バス車両の「安全」を守るうえで重要な仕事です。バス運転士自身が毎日、運行前・運行後の点検を行うのが通例ですが、バスの場合は乗客の安全を守るため、自家用車とは比較にならないほど厳しい安全基準が定められています。このため、自動車整備士2級の資格を持ったプロの整備士が、法令で定められた3ヶ月点検と12ヶ月点検（車検）を実施します。バス会社によっては法令で定められた期間より短い期間で、自主的に定期点検を行う会社もあります。もちろん、何か異常が見つかった場合には、どこに問題があるのかを判断して臨時に故障対応をするだけでなく、運行時のトラブルには、その場で対応できるだけのスキルと経験が求められる場合もあります。

バス会社の技術部門や、バス整備を取り扱う自動車整備会社に入社する必要があります。自動車整備士の専門学校を卒業された場合は、卒業までに自動車整備士3級の資格が与えられますので、この場合は1年程度の自動車整備士2級の資格を取得して、さらに実践を積むこととなります。一般の高校や大学、専門学校を卒業した場合は、入社後に様々な研修を受けながら、自動車整備士3級、2級と資格を取得しながら、ステップアップを目指します。

自動車整備士2級の資格を取得してからは、法令点検作業をひとりで責任をもって実施できる「検査主任」になることが目標となります。通常、2～5年程度で法令点検作業が行えるようになりますが、「検査主任」として法令点検の書類提出までができるようになるには、さらに数年の経験と実践が必要です。路線バスを扱う場合は、ワンマン機器（運賃清算機）の整備に関する知識や経験も必要です。